9 ページ9
.
「はぁ!?」
ここが図書室だって知ってる。
けど、そんなのは構わずに私は叫んだ。
「大貴呼ぼっかな、」
慧「え、ちょ、だめ!」
目の前に置いてある大量の本と、伊野尾くんを見てため息をつく。
去年図書委員会に入っていた私には分かる。
新学期が始まったばかりのこの時期、
本棚の本を全て取りだし、整頓してまた戻す という仕事がある。
「なんで、伊野尾くん一人なの?」
慧「皆用事があるとか言って逃げちゃったんです。
で、A先輩をここに呼んだのは、ただ一緒に過ごしたかっただけなんです」
まるでフィルターがかかったみたい。
私を説得させようと慌てて話している伊野尾くんは……
なんだか可愛い。
慧「ごめんなさい、やっぱ迷惑でしたよね、、
帰ってください!」
「ばか、手伝うよ。やろ?」
伊野尾くん…… ちょっとずるい。
そんな柔らかくふわふわして笑顔で"一緒に過ごしたい"なんて
不覚にもドキッとしてしまった。
背中をぽんぽんと叩きながらそう言うと、伊野尾くんは目をうるうるさせて、嬉しそうな顔をする。
「んー、今日は早く帰れなさそうだね。」
慧「ほんと、すみません!」
本当は怒りたいのがやまやま。
先輩の私をコキ使おうとしてたなんて。
……同い年だったら。
こんなことも遠慮しないでできたのかな?
76人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すん | 作成日時:2016年4月29日 23時