甘酸っぱい後輩くん。 (ページ32)

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戸惑いながらも後ろを振り向いた。

そしたら、私より少し高い所にいて切なげに笑っている伊野尾くんの姿が見えた。

「久しぶりだね」

慧「うんっ」

この数週間の間で話せなかったこと。
いっぱい喋りたいな、

慧「怪我はないですか？」

「うん、助けてくれてありがとう
へへっ、コケちゃった……」

慧「ははっ。目の前にいて、落ちそうになるからビックリしたよ」

またこんな風に話せると思ってなくて、自然と笑みが溢れる。

それとともに、ここ最近の寂しさ、とか良く分からない苦しい感情、とか溜まっていたものが込み上げてきちゃって。

私の目から、ぽろ、ぽろ、と勝手に涙が零れた。

「…ふっ……。」

慧「えっ……！」

ほら、伊野尾くんも驚いちゃってる。

こんな年齢にもなって、人前で泣くとか情けない、

大粒じゃないけど、まだ、ぽつ……と流れ続けている。

「好き…」

自分で言った言葉のはずなのに、驚く。

"好き"って、私が伊野尾くんのことを？

伊野尾くんが好きだったから、今まで胸が苦しかったの……？

突然起こった出来事に、涙もスーッと止まって、それと同時に時間も止まったような気がした。