甘酸っぱい後輩くん。 (ページ30)

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____伊野尾side

放課後になって、一人教室に残った。

寂しく椅子に座りながらぼーっとする。

「うわー、ほんとに好きだぁ」

こんな独り言でも、誰もいない教室だと独りぼっちにそれが響くだけ。

無意識にA先輩にLINEを送ろうとしていた。

『話があります』って。

できれば、前に起こったことは謝って、今まで通り笑って過ごしたい。

告白、なんて勇気俺にはない。

今まで築いてきた仲の良い先輩後輩の関係を壊したくない。

だるそうに、立ち上がり教科書などで重くなったバッグを背負う

窓の外からは、部活の練習に励む生徒の声が聞こえてきて

青春だなぁ、て呑気に考えたり。

「……帰るか」

何か用事があるわけでもないし、このままぼんやり時間を過ごしていくのも勿体無い。

A先輩は元気にしてるかな。

学年が違って、階が違うから会うことも少ない。

っていうか、人数も多いし、教室までいかないとたぶん会えない。

静かに教室をあとにした。

.

……嘘。

やっと会えた

その彼女は偶然俺と帰る時間が一緒だったみたいで、先に階段を降りようとしていた。

さっきまで沈んでいた心も一気に明るくなる。

"さよなら"の挨拶くらいしてもいいですか？