五話 ページ5
「ふぁぁ…おはよう…。」
大きなあくびをしながらリビングに入ると、お母さんが朝御飯を作っていた。
「おはよう、A。さっそくだけどこれ、ノル君に渡してきてくれるかしら。」
朝から外に出ろと…。今日は日曜日だから一日中家でいたいのに。
不満が募っていくが、ここでお母さんに反論すると怒られるだろうから
はい、とやる気のない返事をする。
「昨日、ノル君に渡すの忘れてたのよ。お饅頭。ちゃんと渡してきてね。」
「わかってる。ちょっと待って、着替えてくるから。」
そういえばまだパジャマ姿だった。
このまま行ってしまえば、私は恥をかいてしまうではないか。
急いで階段を駆け上った。
「あら?A、そんな可愛らしい服持ってたっけ?」
「うるさいな。私だって一着や二着くらい持ってるよ。」
お母さんはいつも一言余計だ。
それがなければいい人なのに。
今もほら、にやにやとしながら私を見つめて。
「あらやだ、ノル君がイケメンだからっておめかししちゃって。」
「あー、はいはい。うるさい…。」
たしかにノルさんはイケメンだった。から、多少はおしゃれしたけども…。
べつに好きとか思ってないし。
「じゃあ行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
ノルさん、今家にいるのだろうか。
お出掛けしてたり…はないか。田舎だし。
10秒で着くノルの家のインターホンを押し、中から彼が出てくるのを待つ。
数秒待っていると、がちゃりと扉が開いた。
「はい…。あ、昨日の…。」
「えっと、これ。お饅頭です。お母さんが渡してって言うので……。」
恥ずかしくて肩くらいの髪を耳にそっとかける。
本当に恥ずかしい。人見知りだから。
ノルさんはそんなこと気にせず、にこっと笑った。
「あんがと。…上がってけ。お茶入れでやるべ。」
そう言って私の手をぐいぐい引っ張る。
そんなに上がってほしいものなのか。
「ではお言葉に甘えて……。」
そう言って、彼の家にお邪魔した。
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作者名:みずりんろーる | 作成日時:2017年5月15日 7時