探偵の用心棒３【文スト】【江戸川乱歩】

震える手 ページ47

『ただいま』

返事が返ってこないのも当たり前

居間には入らず、自分の部屋に閉じ籠る
こんな生活をするくらいなら、探偵社と云うものに入った方が良いのだろうか

すると下の階から突然、云い争いの声が聞こえた



父「アイツが出来損ないなのはお前のせいだろ？！」

母「はぁ？！如何して私のせいにするのよ！あなた面倒見たことあんの？！」


『…』

兄が死んでから毎日此れだ
私には毛ほど興味がなかったと云うのに、このような話題ではすぐに私を持ち出す

本当、嫌になる

『てかアイツ呼びって…』

もうこの家族は終わりかもしれない
ならいっそ、家出でもしてやろうか

自室の鍵を閉め、その場に座り込む

すると、部屋の隅にあるリュックが目に入った。

そう云えば、一度だけ家出しようと思ったんだっけ

兄ばかり構われ、何もかも嫌になった小学六年生

でも最後の最後に怖気付いてやめたんだった

『…電話、何処にあるっけ』

こんな生活が続くなら、何処か別の場所に行きたい

_______誰か、私が必要だって、大切なんだって、云ってほしいだけなのに




部屋だとバレちゃうから、外に出て電話しよう

まぁどうせ、私が何をしてても興味をないんだろうけど

静かに階段を降り、最低限の荷物を持って外を出た
雨は降ってるけど、私の傘は無い


そしてコンビニの前で震える手を抑えながら、着信ボタンを押した。

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