偏屈 ページ35
『もしかして、私に見惚れてたのかしら?』
少し揶揄うように云い返すと、返ってきたのは予想外の言葉だった。
乱「そうだって云ったら?」
間宮は少し吃驚したように目を見開くと、何を云ってるんだと云わんばかりの貌をして答える。
『そうだって…アンタが私にそんな事思う訳無いでしょ』
乱「…其の通り!僕のこと十年間守ってるだけあるな!」
グラスを片手に、お見事とでも云うように間宮を指差す。此の守る守られるの関係も早十年。其れは丁度、武装探偵社が出来た頃の話。
『そろそろ戻りましょ。あまり長くいると風邪ひくわよ』
そう云って乱歩の手を引くと、もう片方の手でグラスを受け取った。『落とすと危ないから』と云う理由でもあるのだろう。
船内に入ると同時に手を離す。人目が多く、目立ってしまうからだ。
二人が戻ったことに皆が気がつくと、彼方此方から話しかけられる。間宮も、敦達の所へと行ってしまった。
ポツンと一人にされた乱歩に、与謝野は伺うように話しかける。
与「ちゃんと云えたのかい?"似合ってる"って」
乱「…」
沈黙が答えなのか、与謝野は察したように苦笑いをした。
与「また次があるさ」
乱「…うん」
間宮を見れば、何やら敦達と楽しそうに歓談している。其の表情は乱歩には見せた事がないような、綺麗に笑っている貌だった。
乱「……そう云うとこだよ」
乱歩がボソッと呟いた言葉は、一生彼女に届くはずもなかった。
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クリームソーダ(プロフ) - マジで理想が合いすぎのヤバい小説なんよ、まじ推してる!投稿ファイトです! (8月14日 20時) (レス) @page31 id: 26b86d7ce9 (このIDを非表示/違反報告)
黒蜜おもち - 2度目のコメント失礼します!ホントに神すぎて思わずコメントさせていただきました!前のコメントで続編ありがとうございますに訂正します。ほんとうにこの作品神です。有難うございます・・・! (8月9日 20時) (レス) @page22 id: b30c1230b7 (このIDを非表示/違反報告)
ミルねこ - 乱歩さん…!可愛すぎる!!ほんとに神作品に出会えました…!いざという時の乱歩さんのかっこいいところと普段の可愛いところをキャラを保って書かれていてホントに最高です!!続き楽しみにしてます! (8月9日 17時) (レス) id: 0b8b35e0bd (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 続編おめでとうございます!この作品が大好きで毎日スマホ確認しちゃいます (7月31日 8時) (レス) @page9 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
黒蜜おもち - 続編おめでとうございます!私この作品大好きです!いつも読むのを楽しみにしてます (7月27日 18時) (レス) @page1 id: 32263cd71c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜 | 作成日時:2023年7月27日 15時