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A「き、京本さん…?」
ニカッと笑った彼はそのまま窓から中へ入り、
「へー凄い部屋だ」
なんて言いながら辺りを見回す。
慌てて窓を閉めて、扉にも鍵をかける。
騒ぎになっていないから、
監視にはバレていないようだ。
A「ど、どうしたの?突然あんなところから…。」
大我「いや?なんかお嬢様にもっかい会いたくなったから。」
それだけで
この場所を見つけられるものだろうか。
いや、人伝に聞くことは出来る。
貧民街に比べたら大きくて目立つ家だし。
けど此処は二階で、
あんな狭いところから窓を叩いた彼は肝が据わっている。
大我「ねぇ、この前の彼は旦那さん?」
A「……違うわ、婚約しているだけ。」
ソファに腰掛けてくつろぐ彼は、
私の答えを聞いて
何処かホッとしたような表情をした。
そんな彼を見ながら
私も向かいのソファに座る。
大我「ふーん?好きじゃないんだね、彼のこと。」
A「当然よ。私達に愛なんて無いわ。」
大我「じゃあ何で婚約なんてしてんの?」
その問いに、私は言葉を詰まらせた。
あんなにも綺麗な絵を描く彼に、
貴族の汚い考え方を教えても良いものだろうか。
何だかそれを教えてしまったら、
彼の絵も汚れてしまう気がした。
A「…貴族には、結婚をして両家の暮らしを豊かにするやり方があるの。」
大我「へ〜、お貴族様のやることは分かんないな。」
ーそれって断れないの?
と、テーブルの上に置いてあった冷めた紅茶を
飲み干しながら言う彼。
ついでに「うわ冷めてる」と言う文句も加えて。
A「…貴族である以上無理ね。」
大我「じゃあ貴族じゃなくなったら良いじゃん。」
A「無理言わないで。帆高も父親も、きっと逃がさない。それに、貴族じゃなくなった私は死ぬだけよ。」
大我「俺には今も同じに見える。」
まだ二回しか会っていないけれど、
彼は時々、鋭い発言をする。
言い当てられた私はハッとし、彼の瞳を見つめた。
彼も彼で私のことをジッと見ていたようで、
私と彼の視線が交じ合う。
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作者名:Shiona | 作成日時:2024年3月22日 23時