正反対な私達の共通点 ページ8
あれから数日が経った。
帆高はよりいっそう私への監視を強め、
自由に動き回ることも困難な状況になった。
しかし、それよりも私は
父親の方が気がかりだった。
私の父親は帆高のことをえらく気に入っており、
一人娘よりも帆高の味方につく。
そんな帆高大好き人間に、
この前の私の行動が耳に入れば、
どうなるかは想像がつく。
幸いにも家に帰ってきたときは
急な出張で留守だったため殴られることはなかったが、
その父親が今日帰ってくる。
覚悟を決めて会わなければ。
そう意気込んだところで、
突然父親が部屋に入ってきた。
彼の不遜な態度が目に付き、
私は挨拶をすることもせず、
ふいっと視線を手元に戻した。
父親「礼儀も無くしたのか。」
A「あら、そっくりそのまま返すわ。レディの部屋に入るときはノックをするよう、お母様に教わらなかったのかしら。」
パンッと頬を叩かれる。
衝撃で途中だった刺繍は床に落ち、
私の頬はどんどん熱を持っていく。
手を上げた父親は私の反抗的な物言いに
さらに期限を悪くしたようで、顔を真っ赤にさせていた。
父親「…もうあんなことはやめなさい。」
A「それは、…帆高に楯突いたこと？」
無言は肯定。
貴族社会ではよくあることだった。
典型的な貴族に染まっている自分の父親に、
こんなにも嫌気がさすことはないだろう。
A「いい加減目を覚ましなさいよ。こんな世界じゃ、爵位なんて意味を持たないわ。お金があっても、獣が居なくなるわけじゃない。そんなに大事？上に立つことが。」
父親「うちにはもう金が無いんだ。
A「…外に出ればそんなもの関係無いわ。いつか獣が侵入してきたとき、彼らは真っ先に私達を差し出す。そのための餌なのよ。」
父親「ありえない。司波家はこの世界状況を重く見ていらっしゃるから、きっと近い将来、あんな獣は居なくなる。そのとき、うちが隣に居るべきだ。」
司波家の方々に
絶対的な信頼を抱いている父親には、
私の言葉は子供の妄言にしか聞こえない。
帆高や、彼の両親を見ていれば分かる。
あの家は親子そっくりで、まるで生き写しのようだ。
彼らが私達の面倒を最後まで見るはずがない。
獣が襲ってきたとき、
私達は餌にされ、司波家の隣には
もっと優秀な家紋が居ることだろう。
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作者名：Shiona
| 作成日時：2024年3月22日 23時
