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「何で見つかった」
なんて愚問だろう。
こんなところで、
綺麗な格好をしている人間は限られている。
人伝に聞けば直ぐに見つかることなんて、
分かっていた。
帆高「帰ろう。君のメイドだって心配していた。」
A「あ…。」
グイッと私の腕を引っ張り、
連れていこうとする帆高だったが、
大我「…話も聞かずに連れてくの？」
京本さんの一言に、足を止めた。
そのときようやっと帆高は
彼のことを視界に入れた。
帆高「悪いが、対等に口を利けると思わないでくれないか。君みたいな人と俺達は住む世界が違う。」
A「なんてことを言うの帆高。京本さんは私を、……助けてくれたのよ？」
帆高「助けた、だって？」
A「そうよ。此処に一人で入った私に、とても親切にしてくれたの。…そうよね？」
嘘は言っていない。
だって彼が居なければ
私は今頃まだ走っていただろうし、
こんな素敵な絵には出会えなかった。
それに、彼はあの能力について
私に追求してこなかった。
私にとって、一番の親切だった。
話を合わせてもらおうと目配せをすると
勘の良い彼は頷いてくれた。
大我「あー、大体そんな感じ。」
帆高「…じゃあ、お礼をしないとだな。…君、彼に千円渡してくれ。妻を助けてくれてありがとう。」
従者にそう命じた彼だが、
「ありがとう」なんて
これっぽちも思っていないような口振りだ。
A「……ハッ、愛する妻の値段はたったそんなもの？」
帆高「彼にとっては高額だろう。…さぁ帰ろう。此処は冷える。」
帆高は私の肩を抱き、自分の方へ寄せる。
その際、顔にかかっていた前髪を退かし、
私を"綺麗な装飾品"へと変える。
こんなところでも、
自分を優位に見せたいのか。
腹が立った私は彼の腕を振り解き、
京本さんの元へ向かった。
A「返すわ。本当にとても素敵な絵だった。」
大我「ありがとう。」
A「いいえ、此方こそありがとう。」
ー能力のことを聞かないでくれて。
なんて言葉は口には出さず、握手を交わす。
きっともう会うことはないだろう。
また同じように家を飛び出して
貧民街に出向いたとしても、
彼に会える確率は低すぎる。
彼が名のある画家へとなったそのときは、
全力で支援しよう。
そんな思いを胸に、
私は手を離し、帆高と共にその場を去った。
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作者名：Shiona
| 作成日時：2024年3月22日 23時
