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大我「俺は大我。京本大我。」
A「Aよ。……朝比奈、A。」
大我「うわ、貴族様だ。」
やはり苗字を聞けば身元は分かるわけで、
気付いた彼の視線が耐えられなくて咄嗟に目を逸らした。
大我「それで?お嬢様一人がこんなところで散歩?」
A「そう見えるなら、そう思ってくれて構わないわ。」
大我「まぁ違うよな。泣きながら散歩する人なんて居ないし。」
彼はゴシッと指で私の目元を拭った。
慣れていないのがよく分かる手つきだった。
帆高とか、貴族の男性は
息を吐くように女性を花のように扱うから、
彼の慣れていない感じが新鮮だった。
大我「
A「…………。」
「違う」と言えば嘘になる。
何もかもが嫌になって家を飛び出し、
貧民街まで逃げてきた。
いっそのこと獣に出会して生を終えるのも
悪くないと思っていた。
でもそれを、
こんな出会ったばかりの青年に
話しても良いものなのだろうか。
訳ありだと言うことは、
格好で分かるだろう。
彼の問いに沈黙で応えている時点で、
もう見透かされていそうだが。
帆高「見つけたぞ、A。」
そんなことを悶々と悩んでいれば、
今一番聞きたくない声が聞こえた。
バッと顔を上げたその先から、
帆高とその従者が歩いてきた。
帆高「こんなところまで来ているなんて、流石に俺も疲れたよ。」
隣の京本さんには目もくれず
私に羽織っていた上着をかける彼。
まるでその存在を認識していないかのよう。
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作者名:Shiona | 作成日時:2024年3月22日 23時