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この辺りに住んでいる人達の服は
薄汚れていて、色鮮やかではない。
中にはまだ綺麗な格好をしている人も
数人程見かけるが、その顔色は皆酷い。
彼等は巻き込まれたくないのか、
此方には目すら向けない。
「おい貧乏人。また鼠みたく食料を漁りに来たのか？」
建物の隙間を歩いていると、
そんな声が聞こえた。
思わず陰に隠れて耳を澄ませば、
数人がかりで一人の青年を囲んでいるようだった。
「それ以上入り込むな。貧乏人を助ける奴なんか此処には居ねぇよ。」
青年「こんなところに住んでいるお前らも、そう変わんないだろ。」
「生意気言いやがって！」
彼は事実を言っただけだろうに、
気に食わなかったのか、男性達は青年を殴る。
恐る恐る影から顔を覗くが、
それは酷い光景だった。
殴られたことで彼は
スケッチブックのようなものを落とし、
それを数人のうちの一人が拾った。
「見ろよこれ。お前、画家志望か何かか？」
「残念だったな、叶わぬ夢だ！」
青年「おい返せよ！！」
彼等が青年の絵を破こうとしたそのとき、
私はもう見ていられなかった。
体が勝手に動いてしまった
とでも言うだろうか。
外では絶対に使わないと決めているあの力を
このとき私は使ってしまった。
目の奥が熱くなるほど
ジッと男性達を睨むように見る。
数秒そうしていれば、
あの日の帆高のように彼等は動きを止め、
スケッチブックから手を離す。
「な、何だ？何が起こっているんだ！？」
「体が勝手に…！」
そのまま彼等には
別の場所へと移動してもらう。
路地裏の影に消えたところで、
漸く目を離し、痛くなったそれを手で覆う。
やってしまった。
彼等のいざこざなんて私には関係無いのに、
つい出しゃばってしまった。
足音を立てずにその場を離れ、
また別のところへ逃げようとしたが、
青年「助けてくれてありがとう。」
後ろに居た筈の青年が
いつの間にか目の前に立ちはだかっていた。
この様子から、
私の存在に気付いていたんだろう。
一体いつから？
見られていると分かっていながら、
やられっぱなしだった？
嗚呼駄目だ。
貴族のプライドが出ている。
人前では完璧であれ、
と言う家の教えが脳内を支配している。
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作者名：Shiona
| 作成日時：2024年3月22日 23時
