美しいものを描き残す手 ページ3
A「良い加減にして。私は貴方の所有物か何か?装飾品にするのはやめてちょうだい。」
帆高「一体誰がそんなことを言ったんだ?君は俺のものだが、装飾品じゃない。冷静になれA。」
A「誰が言ったか…ですって?貴方自身よ帆高。」
帆高「俺がいつそんなことを言った?」
A「えぇそうね。私の前では言ったことないわね。精々楽しかったでしょう。"お友達"と一緒に騒いだ夜は。」
何も知らないと思っていた帆高は
ギクッと言葉を詰まらせる。
帆高「何でそれを…。」
A「監視を付けているのは貴方だけだとでも思った?」
彼が私を愛していないことは
とうの昔に知っている。
勿論私だって
愛そうとしたことなんて無いが、
そんな未来の夫のために
慎ましい淑女として振る舞うなんて御免だ。
帆高「コイツ…!」
A「何?貴方は良くて、私は駄目だって言うの?監視を付けるのはやめて、と前にも言った筈よ。」
面が良い私を自分の隣に置くのは
さぞ気分が良いものだろう。
隣の女がどんな表情をしているかなんて
気にもせずに。
帆高「…落ち着けA。夫を甘く見るような妻は嫌いだ。」
彼は装飾品が勝手に動くことを酷く嫌う。
外で勝手をされたら、
彼の面子に関わるから、監視を付けている。
A「こんなものもううんざりよ…!」
今日のお茶会で身に付けていた髪飾りも、
綺麗に編み上げた髪も全部解いて、
ボサボサの状態のまま部屋を飛び出す。
帆高「A!!!」
止めどなく溢れる涙を拭いながら、
玄関まで走っていく。
「いけませんお嬢様!!外に出るなど死にに行くも同然です!」
メイドのそんな制止の声も聞かずに
家を飛び出し、宛もなく走る。
今日は生憎の曇天。
まだ明るい時間帯なのに、
今でも雨が降りそうなほど暗い空の下、
廃れた住宅街を駆け抜ける。
自 殺行為であることは分かっている。
メイドの言う通り、
車以外で外を移動するのは死にに行くようなもの。
走っているうちに、
段々と廃れた街は更に酷く荒廃していき、
綺麗な格好をしている私が異色な場所へと、
いつの間にか辿り着いていた。
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作者名:Shiona | 作成日時:2024年3月22日 23時