・ ページ11
確かに、
貴族でなくなった私は生きていけないけど、
貴族である私も死んでいるようなものだ。
このときの私は、
何故か彼に心を許しきっていた。
まだ二回しか会っていない、ほぼ他人にも関わらず。
きっと彼の距離感が
私にとって心地良かったからだと思うが、
少し迷った末に、全て話すことを決めた。
A「…お母様が亡くなってから、父親はお酒に溺れて散財して、至る所で借金を作ったわ。その返済のために、良家と私を結婚させるの。」
大我「つまり、結婚することで相手側からお金の援助をしてもらえるわけだ。」
全て話しても彼なら大丈夫だと
考えた私の予想は当たった。
予想通り、彼は貴族の汚さを知っても
「へぇ」と答えるだけで気にしていなかった。
A「散々な世界だわ。…いっそ、獣に襲われて死んだ方が、って思って家を飛び出したの。」
大我「駄目だよ。自 死は絶対に駄目。」
いつの間にか傍に来ていたのか、
隣に座った彼は私の手を握って強く言った。
大我「こんな世界でも、幸せは見つけられる。俺が証明してあげる。…おいでよ。嫌な記憶なんて直ぐ忘れるから。」
立ち上がった彼は
紳士の真似事をするかのように私に手を差し伸べる。
その手を恐る恐る取り、私も立ち上がれば、
京本さんの足元から黒い影が伸びる。
彼が気にせず窓を開けると、
黒い影は近くの木に伸び、その太い幹に絡まる。
A「ちょっ、京本さん!」
大我「大我だよ。」
A「……た、大我。これって…!」
大我「俺の能力!闇の支配者っぽくてカッコイイだろ!」
202人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Shiona | 作成日時:2024年3月22日 23時