ペルソナリテ ページ1
二、三年前、
トウキョウで"あるウイルス"が発生した。
そのウイルスは新型のもので、
感染した人は身体が腐り、
家畜では飽き足らず人間までも食す暴食な獣、
所謂ゾンビと言うものになる。
彼等の唯一の弱点は頭であり、
それ以外を攻撃しても意味が無い。
特効薬はまだ製薬されておらず、
噛まれたり、引っ掻かれたりした場合の感染率は100%。
それからどんどん拡大していき、
トウキョウは廃れてしまった。
政府や上流貴族は
ウイルスが発見されて直ぐにバリケードを作り、
一日一日を凌ぎながら
今もまだこの廃れた街で生活している。
「昨日午後17時頃、また獣の侵入が確認されました。貧民街の壁に綻びた箇所が見つかり、そこから侵入したと思われます。」
高そうな壺や絵画を飾った空間で、
彼等は今日もまた、意味の無い会議を開く。
"外界"の話をしているように見えて、
実際は見栄の張り合い。
こんな日常のなかでも、
自分を優位に見せようと必死なのだ。
「幸いにも獣はその場で衛兵によって始末され、感染が広がることはありませんでした。」
「やはり下界は綻びが目立つ。いっそのこと見捨てた方が我々にとっても好都合ではありませんか？」
「同意ですな。下等な貧民など我々が助ける義理も無し。」
自分達は妻子を置いて
下界の娼館に通っているくせに何を言ってるんだか。
下劣な笑い声をあげる爺共に呆れ、
飲んでいた紅茶を少々乱暴に置く。
A「こんな世界じゃ、貴族だとか、上流階級だとか、そんなもの全て無意味では？」
ーハッ！と嘲笑しながら言えば、
侮辱として受け取った爺共は此方を見据える。
間違ったことを言った覚えは無い。
生き残るのは貴族だけに限らない。
私の勝手な行動に腹を立て、
真っ赤な顔をしている父親の視線さえも
気にせずにそのまま部屋を退出した。
廊下に出て自室まで足を運べば、
道中視界に入るのはヒビ割れた硝子窓や途中で無くなる壁。
室内や自身だけ着飾っても、
建物がこんなんじゃ"貴族"なんて呼べない。
そんなことすら分からない彼等に、
私は毎日うんざりしていた。
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作者名：Shiona
| 作成日時：2024年3月22日 23時
