六 ページ6
「よし、今日も行ってくる！」
「懲りないねぇ…。車に気を付けてね。あとはぼったくり！」
「はーい。」
何故ぼったくりに気を付けろと言うのか分からなかったが、適当に返事をして家を飛び出した。
「ノルさん居るかな？」
一人で歌を歌ってゆっくりと歩く。
早くノルさんを見つけてお話をしたい。
「ふんふーん…。って、うわっ！」
普通に歩いていると、後ろから誰かにドンと背中を押された。
転けそうになるのを何とか堪えて、体勢を整える。
「危ないなぁ、もう。……ん？」
後ろのズボンのポケットに手を当てて、違和感に気づく。
さっきまでポケットの中にいれていたものがなくなっているではないか。
「あー、おばあちゃんが言ってたのはこういうことか。」
ようやく理解できた。。
財布を取られたのだ。
私は叫ぶ。
「待てやこの犯罪者！！」
と言っても犯人の顔を知らないのでどうすることもできない私は、またよろよろと歩き始める。
もういい、この際お金のことは諦めよう。
「おめぇ、こんなことしてええと思ってんのけ？」
「ひ、ひぃぃ！！」
「あ？あれ？」
数十メートル先で聞き覚えのある声がする。
私は走ってそこに近づいてみた。
「の、ノルさん？」
彼は私の存在に気づいていないのか、話を続ける。
「おめのせいで評判落ちたりしたらどうする？あんぽんたん。この財布は持ち主に返し。」
「あ、あの、ノルさん…。」
「ん、おめ、なして此処に？」
「いや、そのお財布…。」
ノルさんが手に持っているノルウェーの国旗が小さくプリントされた財布を指差す。
「これ、おめぇのもんだったが。」
ほいと、お財布を返してくれた。
そして犯人に一言。
「もうこないなことするでねぇ。わがったか？」
無表情で言うもんだから、怖くて怖くて仕方がない。
犯人はそそくさと逃げていった。
「…ふぅ。おめぇ……気を付けろ。」
「ふ、ふおい。」
「此処はぼったくりさ会う人多いから、財布はちゃんと鞄にしまえ。」
「わかりました、ノルさん。」
まさかこんな形でノルさんと再会するなんて。
私は純粋に嬉しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みずりんろーる | 作成日時：2017年4月2日 10時
