三 ページ3
しばらく歩いていたら、大きな木を見つけた。
「此処だべ。」
「本当だ、ケーキ屋さんと大きな木がある。」
「良かったな。」
そう言ってよしよしと頭を撫でてくれたノルさん。
何だか子供扱いをされているみたいで嫌だな。
「ありがとうございました！！あの、お礼は…。」
「別にお礼はいらねぇべ。おめが此処まで辿り着けてえがった。」
本当に優しい人だな、この人は。
「…あ。まだおめの名前聞いてなかったな。」
「Aです。」
「そうけ。A、また会えるとええべな。」
少しだけ笑ったノルさん。
そう言って、私に背中を見せる。
「待って……ノルさん…。」
「…なした？」
「また、会えますか？」
此処でなにも言わずにお別れをしたら、もう彼には会えないかもしれない。
だから、勇気を振り絞って聞いた。
「何処かで…な。」
「…分かりました。さようなら、ノルさん。」
「おう。」
何も言わずにスタスタと歩き出した。
ノルさんを最後まで見届けて、家のインターホンを押した。
「はーい！」
「おばあちゃん、私だよ。」
「A？」
家の中からドタドタと騒がしい音が聞こえる。
おばあちゃん、元気そうで何よりだよ。
「A！！久しぶりね！」
「うん！久しぶり！」
出てきた瞬間、私をぎゅっと抱き締めるおばあちゃん。
苦しかったけど、とても嬉しくて。
「えへへ。」
ノルさん、ありがとう。と心の中で呟いた。
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作者名：みずりんろーる | 作成日時：2017年4月2日 10時
