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見慣れない景色が、私を不安の池へと突き落とす。




「……っ。」



目に涙が溜まってくるのが分かる。



鼻がつんと痛む。




「……なした?」



私の様子がおかしいと思ったのか、男性は歩くのを止める。



泣いているのがバレないように下を向いて言った。




「大丈夫です。だから…。」



「……そうか。」




良かった、何とか誤魔化せた。



その次の瞬間、私の手を握る男性。




「こうしてたら、少しは安心か?」



「えっ……。あ、あの……。」



「泣くでねぇ。」



「な、泣いてませんから!」



「涙、流しとるくせに。」




どうして名前も知らない私に優しくしてくれるんだろう。




「日本に戻りたいか?」



「…べつに。」



「ノルウェーも良いところだべ。」



「分かってます、分かってますけど…。」




彼のその優しさが嬉しくて、それと日本が恋しくて泣いているのだ。



優しい外国人は何人もいるけど、こんなに優しい人はいない。



何処を探しても、絶対に。




「ありがとうございます。」



「べつに。」



そういえば、まだ名前を聞いていなかったな。



「あの、お名前…。」



「…ノルかノーレって呼んでくんろ。」



「わかりました。ノルさん。」



「……ん。」




ノルさんは、私の手をぎゅっと握った。



まるで、もう離さないと言っているように。




ノルさんの手は、いつかお母さんと繋いだ手のようにとても温かかった。

三→←一



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作者名:みずりんろーる | 作成日時:2017年4月2日 10時

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