木賊色の彼女 ページ3
「入隊動機を聞かせていただけますか？」
「迅隊員の様になりたくて、です！」
溌剌とした、紛うことなき陽の雰囲気を纏った少年はキラキラとした瞳でそう言った。質問を飛ばした側である柑子色の瞳をした女性はその勢いに、若干気圧されていた。そして、幾つかの用意された質問を一通り聞き終えた後、その少年に面接終了の旨を伝える。少年が部屋から退出したのを確認し、女性は【面接試験終了】の文字を書類へと書き入れる。
「元気の良い子だったわね」
落ち着いたソプラノボイスが、女性の鼓膜を揺らした。其方に視線を向けると彼女の柑子色と、先程の少年と同系色の木賊色が交わる。
「はい...結構気圧されてしまいました...」
「ふふ、見世物としては上出来よ」
「笑い事じゃないですよ！面接官が受験者に気圧されるとか...しかも中学生に...」
そう言って項垂れる柑子色の持ち主、
そう、榎本には圧倒的に人を見る目が無いのだ。
人事部として有るまじき事ではあるが、配属された以上首を切られるまでは頑張るしかないのだ。
「あの子...緑川君だったかしら」
辞めないといいわね、と木賊色の持ち主は榎本に交代の時間だと告げた。しかし、榎本は自身の能力の無さをただ嘆くだけの人間では無い。木賊色の持ち主に、見学をお願いすれば隣に座っているように指示をされた。
そして、新たな受験者が入室をしてくる。
「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
ソプラノボイスがそう問えば、受験者は名を名乗る。そして年齢、出身、在学校等々の情報を確認した後、あの質問を口にする。
「貴女の入隊動機を教えていただけますか？」
「自分の生まれ育ったこの三門市を、守りたいと思ったからです」
テンプレートな返答だが、一番受かりやすい無難な返答。自信満々にそう答えた少女に、木賊色の持ち主は微笑む。
「...なるほど、“自己顕示欲”を満たす為、ですか」
「は？」
笑顔でそう返した木賊色の持ち主に、少女は分かりやすく嫌悪の色を見せた。
「そのテンプレートな答えを使うのであれば、その見え透いた本心はもう少し隠せる様になりましょう」
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作者名：綺世 | 作成日時：2022年5月29日 22時
