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Lynx。 ページ44

ー No ー

この事実を知らない者たちは、大層驚く。
こんなに身近に、あの世間を騒がせているイラストレーターが存在していた。
驚かない方が、おかしいくらいである。


「何故それを?」


クロウリーの問いかけに、ゲイズは再び口を開く。


「これは、公には出ていない作品です。
出来は特上、しかし何故公開されなかったのか。

...それは、これらの作品全てがNRC(ここ)でのAの思い出だったから。」


そう言って、作品を更に数枚取り出した。
そして、一同に向けて一枚一枚確認をし出す。

教室での誰かの後ろ姿と黒板に書かれた文字。
運動場での日陰から眺めた生徒の授業。
部活での絵の具をぶちまけて、ふざけている所。
寮での生徒達の集い。
文化祭での七人が踊っている一瞬。
マジフト大会での生徒の攻防の瞬間。
ハロウィンでの各寮の仮装。

大きなイベントから在り来りな日常のひと時まで、彼女の絵柄で描かれていた。


「Aにとってこの場所は、掛け替えのないものだったようです。
私達が持っているより、貴方方が持っていた方がAも喜ぶでしょう」


「生前、何もしてやれなかったからこれくらいの事はしてやらないと」とゲイズは続けた。
そして、ゲイズの言葉を聞いて今まで黙っていたシェリーも「どうか受け取って下さい」と話す。

一つ一つの作品を見て、各々思い思いの感情を抱く。

しかし、統一して「Aと過ごした多くの時間は、楽しかった」と言う結論に至る。
A・オズワルドは悪人だった。
だが同時に彼女は、善人だったのだ。

皆の記憶の中のAが、それを証明している。


________________


廊下に飾られた絵を見てはしゃぐ生徒達を
少し離れた場所から見るオズワルド夫妻。


「...すごいわね」

「だろうな」


シェリーがLynxの正体を知ったのは、昨日の事だった。ゲイズから、伝えられたのである。
今まで、Aに対して「イラストレーターなんか目指しても人の心が動くものか」と頭ごなしに否定してきたシェリーにとって、今の彼らの状況は想像とは大きく異なっているのであった。


「...誇っていいんじゃないか。私たちの娘だ」

「!!...ええ、そうね」


ゲイズの言葉にシェリーは、優しく笑った。


________A・オズワルドが、シェリー・オズワルドに初めて彼女自身を認められた瞬間であった。

山猫は描く。→←正体



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ナメダンゴウオ(プロフ) - 完結おめでとうございます!すごく惹かれる作品でした。 (2021年6月12日 22時) (レス) id: 6e91026fe2 (このIDを非表示/違反報告)
キラ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで素敵なお話をありがとうございました。 (2021年6月9日 9時) (レス) id: 377aae7433 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新して下さると嬉しいです。待ってます。 (2021年4月12日 22時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます (2021年2月2日 8時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 19ページ クジラ が グジラ になってます。 (2021年2月2日 8時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綺世 | 作成日時:2020年10月22日 3時

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