アンコールは、来世にて。 ページ42
ｰ A･オズワルド ｰ
イデアが泣き出した。
あー、心配だ、本当に。
死を目前にして、私は至って冷静だった。
イデアの言葉もスッと入って来たし、ユウ君のちょっと重たい想いも受け入れられた。
少し顔を上げてみれば、しんみりした顔の他一同。
...さっきまで殺意剥き出しだったのに、なんだその顔。ウケる。
今でこそこんな感じの思考だけど、最初ユウ君駆け寄ってきてくれた時「ああ、一緒に死んでもらおうかな」って思考に至った。
何故とどまったか、自分でも分からない。
ただ、ユウ君は私と逝くには余りにも勿体ない人間だった、と言うのは分かる。
純粋なんだ、彼は。
宗教的な話になるけど、死んだ所で同じところに逝けるとは到底思えなかった。
瞼が段々下がり始めてきた。
感覚も無くなってきた。
思考も、回らなくなってきた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿そろそろ、終わりかな。
「A先輩」
優しい声でそう呼ばれ、もう一度瞼を上げる。
視界がボヤけて、顔は見えない。
「短い時間でしたけど、A先輩と過ごせて、俺は幸せでした」
陽だまりのような言葉だった。
暖かく、私を包み込むような言葉。
ユウ君は、私と一緒の時間を過ごせて幸せだった。
こんな歪んだ、醜い私でも
誰かに、幸せを与える事ができたみたいだ。
あんな騒動を起こした張本人が
最期に、幸福感に満ちて死んでいける。
なんて、理不尽な世界だろうか。
私は最後の力を振り絞り、肺に空気を吸い込んだ。
『私も...幸せだった』
「！！」
ユウ君が驚いたのが、顔を見なくても分かる。
私はユウ君の事を今出せる精一杯の力で抱きしめる。
そして、静かに笑うのだ。
後悔の多い人生だった。
苦しみの多い人生だった。
辛さの多い人生だった。
嘘をつく事が多い人生だった。
然しそれでも、幸福だった。
力が抜け、ユウ君を抱きしめていた左手とイデアを慰めていた右手が地面に落ち土埃が少し立つ。
「「...っ」」
周りで、息を吸い込む音がした。
まあそれも、私には関係ない事。
さようなら、ありがとう。
これにて終演、
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿アンコールは、来世で。
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ナメダンゴウオ(プロフ) - 完結おめでとうございます！すごく惹かれる作品でした。 (2021年6月12日 22時) (
レス) id: 6e91026fe2 (このIDを非表示/違反報告)
キラ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで素敵なお話をありがとうございました。 (2021年6月9日 9時) (レス) id: 377aae7433 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新して下さると嬉しいです。待ってます。 (2021年4月12日 22時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます (2021年2月2日 8時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 19ページ クジラ が グジラ になってます。 (2021年2月2日 8時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綺世 | 作成日時：2020年10月22日 3時
