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正に狂人そのもの。 ページ36

ー No ー

ユウは元々、依存気質だった。
それは、こちらの世界に来てから露見することは無かったが、その気質は確かに現在進行形で健在していた。
それが、先日のオズワルドとの秘密の共有に寄って溢れ出したのだった。

つまり、今の彼はA・オズワルドに執拗に依存し、独占欲の塊となっているのである。


「え...ユウくん何言ってるんスか?」


ラギーがそう問いかければ、ユウはAを先程よりも強く自らの方へ引き寄せた。
Aも抵抗することなく、彼の腕の中にスッポリと収まっていた。


「何をするも何も、ソイツはお前を攫った犯罪者だって言ってんだよ」


レオナがそう言えば、ユウは眉を顰め多勢を睨み付けた。完全に敵視である。
そして、次々に飛び出すAへの罵倒やユウへの注意喚起。それは、ユウの怒りのゲージを着実に貯めていく。


「攫われてなんかないです。
俺は、俺自身の意思でここに来たんです」


驚く一同。
その言葉に、嘘偽りは無い。
昨晩、ユウの元に音もなく現れたのは紛れもなくAだった。
「私と一緒に生きないか」と問われたユウは、自覚したばかりの愛情に従順に返事をした。
そう、今回のユウの失踪には彼自身の意思が反映されていたのだ。
こうなってしまっては、為す術なし。しかし、一同は諦めることは無かった。


「ユウ、冷静になって考えるんだ」

「オズワルドさんの口車に載せられないでください!」

「ソイツは目的のためなら手段は選ばない!それが、例え犯罪だとしてもだ!」


投げられる言葉一つ一つを聞き、ユウは強く拳を握ると同時に、Aの肩をグッと握る。
そして、この言葉を発するのだった。


「俺は...A先輩の為なら、死ねます。
それくらい、大切で、愛しています。」


ユウの言葉に、一同は口を噤むしか無かった。
そして、今まで一言も発していなかったAが口を開く。
.....三日月型に歪めて。


『その言葉を、待ってたの』

「え?」


一瞬の事だった。
ユウの隣で大人しく立っていたAはホルダーから魔法ではなく本物の果物ナイフを取り出し、ユウを押し倒した。
そして、ソレをユウの首元に当てる。


『じゃあ私の為に今、その命、頂戴?』


狂気を纏った笑顔が、ユウに向けられる。
そして、振り上げられた刃がユウに向かって振り下ろされる。

その姿は、正に狂人そのものだった。

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ナメダンゴウオ(プロフ) - 完結おめでとうございます!すごく惹かれる作品でした。 (2021年6月12日 22時) (レス) id: 6e91026fe2 (このIDを非表示/違反報告)
キラ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで素敵なお話をありがとうございました。 (2021年6月9日 9時) (レス) id: 377aae7433 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新して下さると嬉しいです。待ってます。 (2021年4月12日 22時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます (2021年2月2日 8時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 19ページ クジラ が グジラ になってます。 (2021年2月2日 8時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綺世 | 作成日時:2020年10月22日 3時

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