ルシェ･エヴァンズ ページ24
ｰ ユウ ｰ
昼食時の食堂の混み具合には未だに慣れない部分がある。
それでも食堂で食べようと思う理由、それは彼が居るからである。
「A先輩！隣いいですか？」
『ユウ君か、構わないよ〜』
「ありがとうございます！」
そう、A先輩が食堂で必ず食事を取っているからである。
この人は食べるのが早いから、長々と会話は出来ないけど、美術の授業以外で話せるのはお昼だけ。
最近、先輩を含め寮長･副寮長の先輩達が放課後必ず会議を行っているみたいだけど、内容を聞いてもはぐらかされてばかり。
エースやデュースも気にはなっているみたいだけど、聞いて答えてくれるような感じも無いため、詮索するのをやめたらしい。
「...え、オズ先輩食べんの早くないスか？」
『僕と君達の時間軸にはズレがあるようだね』
「凄いファンタジーな感じになってますけどそんな事有り得るんですか？」
『いや冗談だよ。本気にしないで？』
エースがA先輩のからの食器をみてそう言うと、トントンと会話が進む。
本当に会話のテンポが早くて面白い。
そんな感じで四人と一匹で会話を楽しんでいたところで、食堂の入口の方がザワザワし始めた。
なんだ？と思いながらそちらを見ると、混雑している食堂に俺達に向かって道が通った。
首を傾げ、その先にいる人物を見る。
カールの効いたブロンドの長い髪を揺らし、キツく結ばれた真っ赤な唇、鋭く大きな目、そして整った身体と綺麗な歩行でカツカツとヒールを鳴らしながらこちらに向かって歩いてくる“女性”。
「え、あれって...」
「ルシェ･エヴァンズ...だよな？」
「なんでこんなとこいんだよ！」
「うーわ...マジで美人...」
「動く造形美だわ」
ルシェ･エヴァンズと呼ばれたその女性は、迷うことなくこちらに向かって歩いてきている。
え、何？？
怖い怖い。
エースとデュースなんか固まって瞬きもしてないんだけど.....と、ふともう一人の顔を見る。
そして、その人物の表情に俺は驚く。
普段は半開きな大きな目をしっかりと見開き、焦っているのが一目瞭然だった。
普段、絶対にこんな表情をしない“A先輩”が、こちらに向かって歩いてくる女性を見てその薄く形の整った唇を動かした。
『
「え...？」
その言葉は、その場にいた全員を振り向かせるには十分すぎる言葉だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナメダンゴウオ(プロフ) - 完結おめでとうございます！すごく惹かれる作品でした。 (2021年6月12日 22時) (
レス) id: 6e91026fe2 (このIDを非表示/違反報告)
キラ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで素敵なお話をありがとうございました。 (2021年6月9日 9時) (レス) id: 377aae7433 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新して下さると嬉しいです。待ってます。 (2021年4月12日 22時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます (2021年2月2日 8時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 19ページ クジラ が グジラ になってます。 (2021年2月2日 8時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：綺世 | 作成日時：2020年10月22日 3時
