溺れる人魚【JUMP】 (ページ2)

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６月中旬の梅雨真っ只中
激しく降り注ぐ雨が
乾き始めていた服を濡らした

「あ...濡れちゃってる」

バイトから帰宅した光は、バッグも置かず
そのまま濡れた服へと手を伸ばし
部屋の中に取り込むと洗濯機の中へと放り込んだ

予報では降水確率２０%と表示されて
いたのに、光はぐるぐると回る洗濯機をみつめ
口から漏れたように軽い溜息をついた

「髪....乾かそ」

栗色に染めた髪は水分を多く含み
毛先から落ちた雫が肩に模様をつくっていた
光はタオルで髪を軽く拭き
クローゼットにからドライヤーを手に取り
温風を当て始めた

髪も後もう少しで乾く、そんな時だった
スライド式のドアがゆっくりと開き
煙草と香水の混ざった大人の匂いを放つ
すこし肩の濡れた薮が入ってきた

「おかえりなさい、やぶ」

「ん、」

ドライヤーを止めて駆け寄った光を
薮は不機嫌そうな目で見つめたまま
黒いクラッチバッグから茶封筒を取り出した

指紋一つ無い透明なガラス机に
打ち付けられるように投げられた茶封筒

「簡単だよな、人間って」

「ちょっと優しくすれば、すぐ落ちる」

薮は鼻で笑うようにして片方の口角を上げると
丹色(にいろ)のソファーに腰かけた
投げ捨てるように机に置いた茶封筒と手に取り
中からまとまった札束を取り出した

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