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恋柱 × 愛奈 ページ5

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「愛奈ちゃん、大丈夫?なんだかふらふらしてるわ」

「今まであんまり、無限城の外に行かなかったから....疲れちゃった....」


 黄昏時。蜜璃と愛奈は、帰路にたつ人々がごったがえす大通りを手を繋いで歩いていた。


「頑張って、愛奈ちゃん。あと少しで目的地よ!」

「うん、がんばる.....」

「えらいわ愛奈ちゃん!!」


 片手で目を擦りながら何とかまわらない舌で返事をする愛奈と、そんな愛奈を応援しながらいつもより狭い歩幅でとてとてと歩く蜜璃。さながら姉妹である。


 宵の明星もすっかり沈んだ頃、蜜璃はようやく足をとめた。


「着いたわ!ほら、ここ!」

「お茶屋さん.....?」


 蜜璃が足をとめたのは、仄かに明かりが灯る一軒の茶屋だった。


「ここね、私のお気に入りなの!」


 幼子が秘密基地を自慢するかのような笑顔でそう言うと、蜜璃は迷うことなく愛奈の手を引いてのれんをくぐる。


「いらっしゃい。おや、蜜璃ちゃんじゃないか!久しぶりだね。隣のお嬢さんは...まさか、隠し子かい!?」


 女将の口から発された隠し子という言葉を聞いて、愛奈はきょとんと首をかしげ、蜜璃はキャッ、と顔を赤らめた。


「ち、違いますよ女将さん!えっと、この子はちょっとした事情があって預かっている知り合いの子で.....」

「愛奈のおかあさんは、蜜璃さんじゃないよ.....?」


 あわあわと答える蜜璃と、いまだに首をかしげる愛奈。正反対な2人の様子を見て、女将は面白くてたまらないという風に吹き出した。


「あっははは!そりゃすまなかったね。ほら、前に蜜璃ちゃんと一緒に来てた黒髪の人と蜜璃ちゃん、いい感じだったからもしかしたらと思ったんだけど。見ての通りもうお客様も少ないから、好きな席に座っていいよ。注文が決まったら呼んでおくれ」


 にかっと笑って調理場に戻っていく女将の背を見ながら、今だに顔を赤らめている蜜璃は脱力気味になりながらうーん、と唸る。


「黒髪の人って、やっぱり伊黒さんのことよね。私たち、恋仲に見えていたのかしら...。ふふ、伊黒さんは想い人ができたら、きっとここでその方とお茶をするわよね。ステキだわぁ!」


 胸に感じたちくりとした痛みに内心で首をかしげながらそう笑った蜜璃は、品書きに手を伸ばして自分と愛奈の間に広げた。


「ここのお菓子、とっても美味しいの!私ったらつい桜餅ばっかり頼んじゃうのよ...。愛奈ちゃんは、何か好きなお菓子はある?」

「すきなお菓子......」

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作者名:冷月、このは | 作成日時:2020年1月23日 20時

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