25話目 ページ26
「後少しだからそれまで目開けちゃダメだよ？サプライズだから！」
「本当にあと少しなの？ん？なんかいい匂いがする」
「うん！はい！到着！もう目を開けていいよ！」
「わぁ……！！」
彼の目に当てていた手をそっと離すと、感嘆の声をあげる。
大きな木々に囲まれた小さな箱庭の様な1区域。そこは紫色のラベンダーで彩られていた。
青々とした周りとは対称的に、優しい色合いで染め上げられた箱庭。
風に揺られる度に、ラベンダーの爽やかな香りに包まれる。そこに容姿端麗な少年が立つ。
それはまるで天国のようだった。
うっとりとして目を瞑る焦凍君を見て、思わず目を奪われる。そして、ファーストインパクトは抜群であったと感じ、小さくガッツポーズをとる。
お母さんにラベンダーを大量注文させた甲斐があった。
「はい！じゃあここに座ってね！」
「えっ、ちょ」
調子を良くした私は、彼の背中を押し真ん中のベンチに連れていく。
慌てふためく彼を尻目に私は両手を広げ堂々と宣言する。
「では今から愛生Aによる焦凍君の為だけのコンサートを開きまーす！」
「こ、コンサート？」
「はい！拍手」
戸惑いの声をあげながら、頭の上にいっぱいはてなマークを浮かべる焦凍君。
立て続けにたくさんの事が起こった彼の小さな脳が段々と回り始めたのだろう。意味を理解してくれた瞬間、にっこりと笑ってパチパチパチと手を叩いてくれた。
ここには黄金のドレスも、有名な演出家が作ってくれた演出も無い。
だから、その分。焦凍君への、大切な友達への想いを込めて口を開いた。
彼の笑顔を夢見て。
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作者名：秋桜 時雨 | 作成日時：2019年2月6日 16時
