23話目 ページ24
「……焦凍君、ごめんなさい」
「……？」
不思議そうに見上げてくる彼は、前と変わりない形の整った顔立ちだ。
その目に希望があれば。
憎悪に満ち満ちていなければ。
もう君は、”焦凍君”じゃなくなってしまった。
私の知っている頬を染めて、オールマイトを夢見る少年は。
消えてしまった。
私の無責任な我儘のせいで。
私は、私はなんて事をしてしまったのだろう。
原作がなんだって言うんだ。たった一人の友達が、苦しむ未来が分かっていたのに。助けられなかった。……助けなかった。
彼は、たった独りで、こんな所まで来て、ずっと救いを求めていたと言うのに。
「ごめん……ご、ごめんな、さい」
「なんでAちゃんが泣くの……？」
目の前がやけにぼやけていると思ったら、
そうか。
気がついたら彼の顔が見えなくなるくらい涙が溢れ返っていた。
「だって……焦凍君、痛いのに。痛いのに、私、助けな、かった」
「……」
「ごめん……ごめん、ね……」
許してくれなくていい、いっそ憎んでくれていい。それをあなたの生きる力に変えてもらってもいい。
そのまま焦凍君を抱きしめた。涙でびちょびちょにさせてしまったが、それでも抱きしめた。
初めは、彼も硬直していたが、次第に緊張が溶けたのか抱き締め返してきた。
私よりももっと強く。私の右肩に頭をのせると、片方しか見えない目から段々と涙が溢れてきた。私の右肩が生暖かく濡れていく。
それがより一層、君がここに生きていることを感じさせるようで辛かった。
私はヒーローなんて柄じゃない。
それでもただ。私は、君を。
今度こそ。君を助けたい。
だから。
「ｸﾞｽ……焦凍、君」
「……う、ん」
「私は、私はずっと一緒に居るから」
「うん……」
「焦凍君に嫌われてもずっと友達だから！」
「うん……！」
「絶対に、何があっても1人にしないからッ！だからッ……！」
「うん……！」
もう何を伝えたいのかもう分からない。顔がぐちゃぐちゃになるくらい叫んで、抱き締めて。彼の痛みが少しでも私に移って欲しいと力を込め続けた。
「おれを、1人にしないで……ッ！！」
「ごめんねぇ……！絶対だから……！！」
二人の子供が公園の端っこのベンチで馬鹿みたいに抱き合って、馬鹿みたいに泣きあっていた。
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作者名：秋桜 時雨 | 作成日時：2019年2月6日 16時
