21話目 ページ22
「せんせーさよーなら！」
「はい！さようなら！」
そんな声と共に親と手を繋ぎながら帰っていく子供達。彼らを尻目に、私はしゃがんで1人、靴を履きながら今日のことを振り返っていた。
幼稚園は基本遊んでおやつ食べて寝て遊んでお家に帰るの繰り返し。
絵を描いただけで褒められ、歌っただけで褒められ、靴下を自分で履けただけで褒められ、平仮名を書けただけで褒められる。
いやまじで幼稚園児最高だよ。子供たちの世話とおまる以外なら転生して良かったって思えるわ。
これ以上自己承認欲求満たされることないって。
「あら？今日もお母さん来ないのかな？」
「うん。お母さんおしごとでいそがしいし、お家近いからだいじょうぶ！」
履き終わった後、先生に向かってえっへんと胸を張る。
母は親バカだけど、焦凍君と会ってから何故か兄と同じ扱いになった。正確に言えば赤ちゃん扱いから子供扱いにレベルアップした。
それにお母さんあのコンサート終わってから、また復帰して欲しいという声が鳴り止むことがなく、その対応に忙しいのだ。
母さんのファンサの良さには定評があるからな。
家は近くの公園を右に曲がればすぐにある距離な上、通学路はヴィラン対策もバッチリなのである。
「うん。Aちゃんはちゃんと1人で靴も履けるし、挨拶もできて偉いね！」
「ありがとう！！」
ふっふっふそうだろそうだろ。もっと褒めてもいいんだぜ先生。これで美少女だったら私の幼稚園人生薔薇色なんだけどな。
「じゃあせんせーバイバイ！」
「はい！さようなら！」
とてとてと幼稚園を出て、ゆっくり歩いていく。
いやー。今日も疲れたけど楽しかったな。あそこに焦凍君がいたらもっと最高なんだけど。
今日お母さんが帰ってきたらもう一度取り合ってみようか。小学生になるまでなんて待てなさそう。
そう思っていたからだろうか。
公園に差し掛かった時ふと目に入った。
公園のベンチに懐かしい赤白が。
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作者名：秋桜 時雨 | 作成日時：2019年2月6日 16時
