その青年、最後のお節介 ページ27
「で、どちらへ行かれるのですか？」
昔、ジョーカーと再会した時に聞いたジョーカー達のいた貧救院ﾜｰｸﾊｳｽ。もしかしたら、そこにジョーカー達があのような行動をする理由があるかもしれない。
ジョーカー達は貧救院ﾜｰｸﾊｳｽに住む弟達のことを楽しそうに話していた。最近は会いに行けないらしい。
だから、ジョーカーに弟達の元気な姿を見せてやりたいと思ったのだ。最後に少しでもジョーカー達の励みになるようなことを……
「ですが、この時間ですともう列車は」
「ない。が、お前なら余裕だろレオン」
「仰せのままに」
あっという間に目の前に馬車が現れる。本当に何でもアリだな、この悪魔。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
Side change
馬車を走らせ始めて数分後。リック……いや、A様を見てみれば静かに寝息をたてていた。
最近しっかりとした睡眠をとれていなかったから恐らく疲れが溜まっていたのだろう。目的地に着くまで寝かせておくとしよう。
Side end
「…A様」
「んう…？」
「到着しましたよ」
目を覚ますと、夜は明けたようで周りは明るくなり始めていた。
「…ここ？」
「こちらの丘を越えた先だそうです。ここから先は馬車で行けそうにありませんので」
「…そうか」
この丘の先に、ジョーカー達が育った場所が……
「………え、」
丘を越えた先には何も無かった。いや、何も無いというのは嘘だな。
貧救院ﾜｰｸﾊｳｽの跡地だけがそこにはあった。
「これは…」
「ジョーカー達の育った貧救院ﾜｰｸﾊｳｽはとっくの昔に無くなっていたようですね」
何も無い、か。鞄にしまってあったカメラでこの景色を写真に収める。
「行くぞ、レオン」
「もう宜しいのですか？」
「あぁ、もう十分だ」
「次はどちらへ？」
「次は＿＿」
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作者名：のあっち | 作成日時：2017年12月19日 23時
