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図書館からの帰り道。
私は勝利さんの言葉を繰り返し思い返していた。
" いつでも、Aさんの居場所になるから "
そう言って私に微笑んでくれたとき、胸がドキッとして。
勝利さんのことを、素敵な人だと思った。
……それと同時に、足が不自由だと嘘をついていることへの罪悪感にも苛まれた。
やっぱり、こんなの無理だ。
お兄ちゃんには申し訳ないけど、やめさせてもらおう。
それに……勝利さんは悪い人じゃない。
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お兄ちゃんの部屋のドアをノックする。
返事が返ってきて部屋に入ると、お兄ちゃんは私の方をじっと見つめた。
「……やめんの?」
う、自分から話を切り出す前に勘づかれてしまった。
「な、なんで分かったの」
「思い詰めた顔してるから」
「……私にはやっぱり無理だよ。他の人とかいないの?」
お兄ちゃんはため息をひとつついた。
「いたら最初からそうしてる。お前を巻き込みたくないし、それに……」
「俺の妹だなんて知られたら全部水の泡だ」
「え……?」
問いが、頭をぐるぐると駆け巡る。
お兄ちゃんは、どうしてそんなに勝利さんに執着するの?
勝利さんは、お兄ちゃんの何?
どうして私に、こんな頼み事をしたの?
「……お兄ちゃんは勝利さんとどういう関係なの?ここまでやったんだから教えてくれたって、」
「……そうだな」
そう言うと、お兄ちゃんはぽつりぽつりと話し始めた。
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作者名:すい | 作成日時:2021年1月3日 0時