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Shori side
「え!?いえいえ!楽しいです。毎日友達にも会えるし……」
彼女はそう答えたあと、急に黙り込んで後ろを向いた。
顔がちらっと髪の隙間から覗いたとき、Aさんは泣いているように見えた。
俺が高校に行ってないって言ったとき、いいなぁって呟くくらいだ。
多分、学校が楽しいっていうのは本心ではないんだと思う。
誰にだって人には言えない秘密の一つや二つあるものだ。
本心を言わなかったのは、俺には話せない理由だったんだろう。
でも、その泣き顔を見たらなんかほっとけなくて。
……助けたい、って思って。
「……ここは、
ここには本しかないけど、いつでも来て」
「俺と風磨く、……菊池さん以外にも歳の近いアルバイトが2人いて。話し相手になってくれると思うし」
ちょっと騒がしい奴らだけど。
「いつでも、Aさんの居場所になるから」
ここがAさんの心安らぐ場所であってほしい、なんて。
Aさんは、ゆっくりと俺の方へ振り向いた。
少し赤くなった目を泳がせながらも、俺の目を上目遣いで見つめる。
「……ありがとうございます、」
「では、ごゆっくり」
一礼して、俺は別の仕事をしに席を離れた。
……恥ずかし。
その後、風磨くんがなんかニヤついた目で見てきたのには気づかないふりをしよう。
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作者名:すい | 作成日時:2021年1月3日 0時