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今日は先週借りた本の返却期限。
ということは図書館に本を返さないといけない。
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「はぁ……」
お気に入りのニットを体に当てながらため息をつく。
心を奪うってことは、勝利さんに私のことを好きになってもらうということで。
ということは、勝利さんに可愛いって思ってもらわないといけないわけで。
可愛い格好しないといけないわけで……
そんな理由で、図書館に行くだけなのにこんなにも着ていく服に悩み、鏡の前でファッションショーを繰り広げる自分。
ベッドの上に散乱した私服にもげんなりする。
しかもお姫様抱っこされた後なのだから、顔も合わせづらい。
あのとき、すごくドキドキしたのに……
ていうか、何で車椅子で会わないといけないの?
特に怪我もしてないし、ちゃんと歩けるのに。
お兄ちゃんに聞いてもはぐらかされてばかりだし。
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「わ、もうこんな時間」
気づけば時計は12時を回ろうとしていた。
もう面倒くさいし、このニットワンピでいいか。
急いで着替えて、私は家を飛び出した。
*
「……うぅ」
慣れない車椅子移動にもたつきながらも、スロープを昇って何とか図書館に到着。
でも行きたくないよぉ。
またすっ転んで幻滅させたらどうしよう。
でも、やり遂げなきゃ転校できないし……
えぇ、でも私女子校だし彼氏もできたことないんだよ?
いやいや、でもでも。
入口で頭を抱えていると
「____あ、」
聞き覚えのある声が頭上から聞こえた。
「返却ですか?」
見上げると、ダンボール箱を抱えた勝利さんが立っていた。
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作者名:すい | 作成日時:2021年1月3日 0時