憑依少女Ⅷ (ページ38)

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不安と恐怖ページ38

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『 ·····あの、瀬尾Aさんですか·····？』

坂道テレビさんで披露させていただく黒い羊。

そのパフォーマンスをリハーサルしてから1人で自動販売機に向かい飲み物を買っている時だった。

振り返ると立っていたのはメガネをかけた男性。

首にかかっている名札を見て、この局で働くスタッフさんなのだとすぐに分かった。

「はい、そうです····· 」

『実は俺、瀬尾さんの大ファンで！！』

私が頷くとパァァッと嬉しそうな笑顔になって一気に距離を近づけてきた。

それに戸惑いながらも男性の言葉に耳を傾ける。

『もうパフォーマンス力とか表現力とか凄すぎて毎回圧倒されます！』

「いやいやいや······ 」

『アイドル " の " ！瀬尾さんが好きで····· 』

アイドル " の " ·····？

強調された言葉に少し不安が積もる。

そんな私に気にせずに話すスタッフさん。

凄い褒めてくるからそれにも少し戸惑った。

『応援してます！収録頑張ってください！』

「ありがとうございます」

" それでは！ " と私に軽く頭を下げたスタッフさんは小走りで去って行った。

なんか時間が短いようで長かったな·····。

スタッフさんの背中が完全に見えなくなった時、私もメンバーやTAKAHIRO先生がいる部屋へと戻る。

" アイドルの！瀬尾さんが好きで····· "

あの強調された言葉はまだ私の頭の中で回っている。

雪のように少しずつ積もっていくその不安を追っ払いたくて、私も小走りで部屋に向かった。

· · ·

スタジオのセットは教室をイメージしたようなセットだった。

ボロボロの廃校の様な教室を見回していると、自分の体に入っている女の子の感情が微かに流れる。

収録が終わり、ただ1人で残っている静かな空間。

そんな静かな空間に、自分以外の音が響く。

鈴「 ·····瀬尾」

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