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「来ました。彼です」
透くんが見せてくれたスマホの写真の男性が遂に姿を見せました。
依頼人の婚約者は女性と一緒に歩いてきて入場待機列に向かっていきます。
本当に別の女性と一緒なんだ…
かなり複雑で少し嫌な心地になりながらも、これは大切な仕事！今日の私は透くんの助手！と気合を入れ直します。
遊びにきたよ！を装って、私が建物の前に立ちピースなんかをして見せて、透くんが小型一眼レフのデジカメで写真を撮ります。
勿論私ではなくて、ターゲットの2人です。
2人に気づかれないように、かなり距離をとって待機列に並ぼうとしたところ、2人のそばに小学校2、3年生位の男の子が走ってやってきました。
『えっ…？』
「これは……」
まさか、隠し子？それとも交際相手のお子さんとか…？
声を顰めながら透くんと顔を見合わせてしまいます。
すると、女性は男の子に何かをお話しした後、男性と男の子に手を振って待機列から抜けて出て行ってしまいました。
『んんん？？？？』
「少しややこしくなってきましたね…途中合流になるのでしょうか」
そうこうしているうちに、男性と男の子は2人で入場してしまった為、私たちもそのまま水族館の中へ入りました。
光と音の幻想的な演出のゲートを潜ると、水族館特有のお水のにおいがして、ワクワクしてしまいます。
「Aさん、おいで」
透くんに呼ばれて彼を見ると、柔らかく微笑んだ彼が左手を差し出してくれていて、それを見て恋人役をするんだった、と思い出して手を取りました。
…さっきの、王子様っぽくて、ドキッとしちゃった。
『前も思ったんですけど、透くんの手って大きいですよね』
「Aさんが小さすぎるんですよ」
手を繋いで少しだけ緊張してるけど、よく考えたら私たち昨晩一緒に……
っ、イケナイ。変なこと思い出さないで、助手さんのお仕事に集中しなきゃ。
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作者名：ひより | 作成日時：2023年4月21日 21時
