Prince of Triple face【降谷零】 (ページ17)

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【side降谷】

彼女の話を聞いているうちに思い出してきた。
あれは高校2年くらいの出来事だっただろうか。
テスト期間中で下校が早かった日に、確かに小学生の少女が車に轢かれそうになるのを助けたことがあった。
隣に景(ヒロ)がいた事も彼女の話で思い出して、懐かしさに小さく笑ってしまった。

そうか、あの少女が、Aさんだったのか。
自分は忘れてしまっていたあの出来事を、
かつての自分たちの姿を、名前を、彼女はぼんやりとでも記憶している。

『…それで、あの時の記憶が過ぎって、つい〝王子様のぜろさん〟と言ってしまったのかもしれません……』

真っ赤になりながら話す彼女が愛らしくて、そんな風に僕の姿を覚えていたとは。
公安警察となった僕達の、昔の姿を記憶している人物は、今ではそういない。
仕方がない────か…。

「Aさんは確か…桃色のランドセルでしたか？」

『えっ？』

「ああ、そうだ。確かあの時、僕が貴女を強く抱き寄せすぎて、着ていたワンピの裾が捲れ上がってしまったのを見て、景(ひろ)が慌てて裾を下ろしていたな…」

『えええ⁈』

「あの時貴女を助けたのは、どうやら僕のようだ」

そう伝えると、Aさんは熟れた林檎のように赤くなって固まってしまった。

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