夢幻泡影【特撮短編集】

今は“先輩”でいい【鶴原錆丸】 ページ10

錬金アカデミーの新入生になった私は、先輩である鶴原さんに片思いをしている。


少しずつアピールをしているつもりなのだが、全く通じていないのだ。


蓮華先輩からの「まずは名前を呼んでみることからやな！」というアドバイスを聞き、


「鶴原先輩、これ落としましたよ……？」


と落ちていたハンカチを渡してみた。


すると先輩の肩はびくりと跳ね上がり、


「……ぇ、あ、ありがと………」


と小さく呟いた。


「どういたしまして。」


大好きな人がこんなに近くにいるのに、好きだと言えないのが寂しくなった。


なんだかいたたまれなくなってこの場を去ろうとした。


……が、右腕を捕まれ、ここにいざるを得なくなった。

もちろん、そんなことをできるのは先輩しかいない。



「……ぇっと、ごめん……」


言いづらそうにしている先輩の次の言葉を静かに待った。


「………その、先輩って呼んでくれて、嬉しかった……」


それだけ言うと、信じられないほどの早さで部屋から出ていった。


その後廊下の方から、


「す、好きってバレちゃったかな………」


と不安そうな声が聞こえた。



「私の思い、伝わるといいなぁ……」


彼にギリギリ聞こえるように少し大きな声で言うと、私も帰る支度を始めた。

混ぜるな危険⚠死ネタ【北崎】→←気のせいだと信じたい【鷲尾風、鷲尾雷】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す