夢幻泡影【特撮短編集】

気のせいだと信じたい【鷲尾風、鷲尾雷】 ページ9

縄できつく結ばれた手首を動かすと、ギチギチと痛々しい音がした。

目がだんだん慣れてきたのか、真っ暗なこの部屋でも物が少しずつ見えるようになってきた。

「……風？雷？どうしてここに……？」

目の前にいたのは、顔なじみの風と雷。

「お久しぶりですね。」

と兄の風。

弟の雷はこっちをじっと見ているだけだった。

私がここに拘束されている心当たりはある。……きっと、難波関係のことだろう。

「……ここから出して。」

「生憎、こっちにも都合がある。一筋縄じゃいかせねぇぞ？」

雷はそう言うとニヤリと笑った。
私に限ったことじゃないと思うが、見下されるのは好きじゃない。

近くにあった椅子を力任せに蹴り上げた。
火事場の馬鹿力というやつだろうか、椅子は音を立てて倒れた。

そしてそれを武器するつもりだったのだが。

「ふ、そんなもので私達に勝てるとでも？」

いとも簡単に防がれた。

この状況が怖いとかじゃない。ただこの二人に勝てないのが悔しい。

「甘いな。……兄貴、どうする？」

「貴方は負けるのが悔しいのでしょう？」

図星だったため、つい閉口した。

「だったら……せいぜい楽しませてください。」

私の顔の輪郭を撫でる指先がなんだか色っぽくて、少しドキドキしてしまったのはきっと気のせいだ。

今は“先輩”でいい【鶴原錆丸】→←恋愛ドラマのラストは誰が飾るのか【桜井景和】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す