【三人称】今夜はあなたと【短編集】 (ページ25)

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【ぺちゃんこ】　後輩ページ25

ぺちゃんこside

『そういや今日から体験入部始まるって』

机に突っ伏しているドンさんに話しかける。

「まじ？」

『まじ』

「どんな子が来るんだろうなぁ」

『めんどくさい奴来なけりゃ誰だっていいよ』

「興味なさげだねぇぺーさん」

興味ないどころではない。正直嫌だ。

どうせ軽音部って名前目当てのやつか、カッコイイからって来たクセになんか違うなと思って来なくなるやつばっか。
そんな簡単なもんじゃねぇよカッコイイだけでできるわけねぇよ馬鹿か。

…つい誰ともない相手に謎にキレてしまう。

『どうせ二度と来ないんだから最初から来んなよな、まじでめんどくさい』

「まぁまぁ、才能ある子とかいるかもよ？」

『才能あろうがなかろうが、ちゃんと来るんなら何だっていい』

俺とは正反対に、ニコニコと楽しそうにしているドンさん。
嫌だが、正直ドンさんの気持ちも一応わかる。

俺らの部活には女子がいない。正確にはもういない。
1年の頃の先輩に女子がいたが、それ以降は1人もいない。

ドンさんは女子が来ることを期待してるんだろう。まぁ俺も想うけど、あんま期待してない。

「うぃーす」

『お疲れー』

放課後になってドンさんと部室に来た。ほんとに男しかいないなこの軽音部は。

今日から体験入部だとドンさんから報告があり、またかと呆れながら笑う仲間たち。

『そろそろ来るんじゃね？』

「よし、みんなやってる風にしとけ！」

「ちゃんとやってるわ！」

そんなことしてるうちに1年生が来た。
そして驚くことに、女子が2人も来ている。まじかよ。

「こんにちはー、部長のせいじですー」

ドンさんの挨拶にぎこちなくお辞儀する1年生たち。
緊張してんだろうな。

「そんな緊張しなくていいからね笑一応俺はドラム担当です！」

『俺ベースです』

「俺はギターだよー！」

「俺もギターだけどリードだよ」

ドンさんに続いて担当楽器を紹介していく。
ベースやりたいやつなんていないんだろうな。

「じゃあみんな、やってみたい楽器の担当の人のとこ移動してみてー」

1年生たちが各々やりたい楽器の担当のやつのとこへ移動する。
まぁギターだよな、知ってた。

「あの、すみません…」

『うぇっ？あ、はい』

声をかけられると思わなくて変な声が出た。

「私、ベースやりたいです」

『…は？まじで？』

「ま、まじです！」

嘘だろ…
俺に女子の後輩ができてしまった瞬間だった。