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149 辰哉side ページ49

朝起きたら子どもたちもAもいなかった。



リビングに出るとテーブルに朝ごはんが置かれていて、昨日の晩あんなことがあったのに、朝早く起きてご飯を作っておいてくれたAの優しさが沁みた。





卵焼き、焼き魚、それと味噌汁はまだ少し温かくて、ついさっきまでAが家にいたことを感じさせた。



初めてAに告白したときに居酒屋で食べていたのが卵焼きだったことを思い出した。


告白に衝撃を受けて箸で持っていた卵焼きをボトっと落としたAの顔が頭に浮かぶ。




そういえばあの時のAは病み上がりだったな。



責任感の強いAは、自分でやると決めたら最後まで弱音を吐かないから、ずっと溜め込んでしまうのに。
会社で倒れた時だってそうだった。




そのとき、俺がAのそばで守ってあげようって決めたはずだったのに。






今思えば、AからのSOSサインは至るところに出ていた。


いつもは綺麗に整理されているはずの部屋が、莉玖や藍のおもちゃで散らかっていたり、普段はAの手作りご飯だったのが、スーパーのお惣菜になることが多くなっていたり。


今までは俺が遅く帰る時、Aが先に寝てしまっている場合は、ご飯とともにお疲れ様って労いの置き手紙が置かれていた。
でも、ここ最近はそれもなくなっていた。






少し考えれば気がつくことができたはず。
莉玖の機嫌が悪い朝、仕事が忙しいことを言い訳に見て見ぬフリをして家を出た。
藍の泣き声が聞こえる夜、明日も朝が早いからと聞こえぬフリをした。



Aが何も言わずに全てを請け負ってくれたから、仕事に専念できていたのに、一段落ついたことに気が緩んで昨日の夜チームのメンバーで夜中までハメを外してしまった。





Aはハメを外すことなんかできないのに。

大人の言葉が通じない子どもたちと四六時中一緒にいて、睡眠時間も削って、俺のことも支えてくれて、倒れることこそなかったけど、精神的にも肉体的にももうボロボロだったんだろう。









卵焼きを口に運ぶ。
優しい出汁の味と柔らかい甘さが口に広がる。
静まり返った部屋には違和感があるのに、この卵焼きはいつもの味だ。



"美味い!"
昨日の朝ご飯のとき、俺はAに伝えただろうか?



キッチンを見つめると、Aの姿が思い出される。







すぐにでも迎えに行くべきなんだろうけど、今の俺にはそれができない。
戻ってきてほしいと伝える権利なんてないから。

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きこ(プロフ) - カさん» ありがとうございます💜 (2023年3月5日 16時) (レス) id: 60f4cd8162 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - きこさん» 作者自己満の作品に嬉しいコメントいただき涙涙です🥹非公開になっていました…!教えていただきありがとうございます!公開いたしましたので、ぜひお読みいただけると嬉しいです^ ^ (2023年3月5日 16時) (レス) id: 5b373ae6f8 (このIDを非表示/違反報告)
きこ(プロフ) - お話楽しみに読ませていただいています!ふっかさんみたいな人ホントにいたらいいのに(⸝⸝ ´艸`⸝⸝)思い違いでしたら申し訳ないですが、126話がないようなのですが… (2023年3月5日 6時) (レス) id: 60f4cd8162 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年2月24日 20時

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