steal my love (ページ9)

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9. No side ページ9

エントランスの明かりが消え、周りが暗くなったと同時に深澤、宮舘、渡辺の3人は走り出した。

エレベーターは使えない。
西田の部屋までは階段で駆け上がるしかない。

いくら普段から体を動かしているとはいえ、アラサーの男たちにはかなりの負担だった。

宮舘だけがスイスイと駆け上がり、深澤と渡辺は今にも止まりそうなスピードでヒーヒー言いながら階段を上っている。

岩「俺が行った方がよかったんじゃね？」

向「はよ上がらんと電気つくでー笑」

岩本と向井の声が聞こえるが、2人の耳には届いているかわからない。

何とか階段を上りきり、西田の部屋の前に着いた。すでにヘロヘロの深澤がカードキーをかざし、3人とも西田の部屋に入る。

ドアが閉まったと同時に電気が復旧した。

息を荒げながら、あぶねー！ギリギリだな！と笑い合う。

宮舘が最初に室内を物色する。
西田の部屋のテーブルには空き缶と錠剤がいくつも置いてあった。

渡「うーわ、きたねぇ！まじで掃除しろよ！」

深「ドラッグだねぇ、これ」

舘「ふっか、これ。リストもあるよ」

あーあ、もうだいぶやっちゃってるねぇ笑
と呟く深澤。

渡「ほんとにクズだな」

しばらく部屋を見回すと、渡辺が寝室のクローゼットにスーツケースがあるのに気づいた。

中を開けると札束が両面に敷き詰められていた。

宮舘と渡辺が協力しながらカバンに金を詰める。

その間深澤は左手を顎に添えながら難しい顔をして、宮舘が発見してたリストを見つめていた。

"元はと言えば西田も被害者なんだよな"
言葉には出さないその思いが深澤の表情をそうさせていたのかもしれない。

そう。西田も犯罪組織という巨大なブラックホールに飲み込まれた被害者の1人なのである。

今回西田から金を奪ったところで、違法ドラッグの犯罪全てがなくなるわけではない。たった1人欠けたところで組織においては大した問題ではないだろう。

こんなことをしたって、何の解決にもならないことを深澤は1番よくわかっていた。

考え込むその目には光がない。

彼は一体何のために盗むのか。