steal my love (ページ32)

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32. Your side ページ32

その日を境に私は、深澤さんとお兄ちゃんの死について調べ始めた。

兄は私が高校生の頃、交通事故で亡くなった。

歳が離れていたこともあり、私は小さい頃から兄が大好きだった。

警察官として誰にでも優しく、危険も顧みずにみんなを守る兄の姿がカッコよくて、幼いながらに将来は私も警察官になるんだ！と心に決めていた。

"大きくなったら、私もお兄ちゃんと一緒に悪者やっつける！"
と言った時の兄の笑顔は今でも鮮明に覚えている。

たまに実家に帰ってくる兄に
「お兄ちゃん！最近はどんな仕事したの？」と聞く時間が大好きだった。

その日の夜も、お兄ちゃんが実家に夜ご飯を食べに帰ってくる予定だった。

なのに、何時間経っても"ただいま！"っていう明るい声が聞こえることはなかった。

その代わりに、無機質な電話の音が夜中に響いた。
もう寝ようと思っていた私がテレビを消した時だった。

電話を受けた母が、呆然として耳に当てていた受話器を落とした。

「…お兄ちゃんが…事故に…遭ったって…」

「…お父さん！A、お父さん呼んできて…！」

あまりにも突然のことで、私はお母さんが何を言っているのか分からなかった。

お兄ちゃんが事故…？
そんなわけない。きっと何かの間違いだ。
だって、昨日だってLINEくれたもん。明日夜ご飯食べに帰るからなって言ってくれたもん。お兄ちゃんが約束破るわけないもん。

病院に向かう車の中でそんなことを考えていた。

病院に着くと連れて行かれたのは病室ではなく地下だった。

エレベータのボタンを警察官が押した時に、私の胸は引きちぎれそうになった。

顔に白い布をかけて冷たくなった兄を私たちは、泣きながら見つめることしかできなかった。

言葉が出なかった。