30. No side ページ30
深澤がその場を去ったすぐ後。
Aが同じ場所へとやってきた。
深澤と同様、手には花が握られている。
貴「…お兄ちゃん久しぶり。また今年も誰か来てくれたんだね」
貴「お兄ちゃんは相変わらず人気者だね〜笑。羨ましいよ。私なんて仲良い友達なんて3人くらいしかいないもん！笑」
貴「色んな人に愛されてるんだね」
線香の煙がまだ上がっていて、ほんの少し前まで誰かがいたことがわかる。
今日はAの兄の命日だ。
Aは自分の持ってきた花を横にして、墓石の前に置いた。
そこには今まではなかったタバコが供えられていたが、愛煙家だった兄を思い、今年は誰かが持ってきてくれたのだろうとAは思った。
しかし、彼女の中で何かが引っかかる。彼女はそのパッケージには見覚えがあった。A自身はタバコを吸わないので、詳しい銘柄はわからない。ただ、つい最近どこかで見たような…そんな思いが消えなかった。
Aはどこで見たのか、記憶を辿っていく。
ああ！そうだ思い出した！
あの時、深澤さんが警察署に泊まり込んだ日の朝、手に持っていたタバコと同じパッケージだ！と気づいた。
まさか…！
いや、同じタバコを吸っている人なんて何百人といるはずだ。ここにきたのが深澤だとは限らない。
と自分で思いつつも、Aはこのタバコを置いた人物の正体を知りたくて仕方がなかった。
もしかしたら、まだこの近くにいるかもしれない。
そう思い、彼女は深澤が去って行った方へと走り出した
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作者名：カ | 作成日時：2023年2月21日 15時
