23. No side ページ23
あれから何度か話し合いを重ね、決行は明日の夜。
侵入するのは、
金庫を開けるための向井、襲われたときに身を守るための岩本、そして自ら志願したラウールと深澤の4人になった。
深澤が侵入を志願したのには理由があった。
PCから情報を抜き取り、他の組織のメンバーや被害者の情報をコピーしておきたかったのだ。
実をいうとマルチ勧誘自体は違法ではない。あくまで商品販売の形態の一つであり、その商品の売買資格を持っている人からしか商品を購入することができないということ。
マルチ契約は、商品を自分の分と販売分購入させられ、契約を取り付けた分だけ、組織からお金が入ってくるパターンがほとんどである。
今回のケースでは、自分の使用するソフトの購入金額が非常に高額となっており、そのソフトを使用してもFX自体での儲けが特別上がるわけではない。勧誘をして初めて自分にお金が入るようになる仕組みになっている。
もちろん目の前の儲け話に目が眩み、内容をよく確かめずに欲に負けてしまう被害者にも落ち度はある。
しかし、勧誘の仕方もずる賢く、被害者たちの弱みに漬け込んで、誘惑をする。例えるなら、空腹でガリガリに痩せこけたライオンの前に丸々太ったガゼルを差し出すようなものだ。
食らいつかない方がおかしい。
そして自分と似た境遇のライオンを連れてきて、自分の仲間にすれば、仲間にした分だけウサギを与えてやると言われるのだ。
元は被害者だった人たちが、気づいたときには加害者へと変わっていく。そこには洗脳にも似た過程が含まれているために、彼らには罪の意識がない。
誰かが洗脳を解かなければ、1番上の人間を捕まえなければ、この負の連鎖が止まることはないのだ。
しかし、違法ではない限り警察として深澤ができることは無いに等しい。だから、彼は警察官としてではなく、1人の人間として、法を掻い潜る奴らに制裁を加えたかったのだ。そして、1人でも多くの被害者を救いたかったのだ。
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作者名:カ | 作成日時:2023年2月21日 15時