腐れ縁【紫】 (ページ1)

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眠たい体に喝を入れ、今日もスーツという名の
戦闘服に身を包む。

テレビの中のお姉さんが、今日は午後から雨が降るって
言ってたことを思い出し、履きかけたパンプスを脱いで折りたたみ傘を取りに戻る。

いつも通りの時間に家を出て
いつもと同じ満員電車に揺られ、会社の最寄駅で降りたら聞き慣れた声で名前を呼ばれる。

深「Aおはよぉ。」
貴「ん、おはよ。」

眠たそうに目を擦るこの男は、今日も顔のむくみが半端ない。

貴「辰哉、顔やばいよ。」

深「いやぁ、昨日ゲーム盛り上がっちゃってさぁ。
　遅くまで起きてたらむくんじゃった。」
　
ヘラヘラ笑って言葉を返すから、呆れてため息が出た。

辰哉は幼馴染というか、腐れ縁というか…
まあ、小さい頃からなんだかんだ絡みがある。

実家が近かったから、小学校と中学校は同じだった。
クラスが被ることは少なかったけど、親同士仲が良かったから、なんだかんだ一緒にいる時間が多かった気がする。

進学先はそれぞれ別々だったけど、テスト期間には辰哉のテスト勉強に付き合わされて、一緒に勉強することもあった。

大学生になるとお互い、大学の友達と遊ぶことが多くて、通学の電車で会った時に少し話す程度だった。

たまに辰哉が随分可愛い女の子を連れて歩いているのを見てどうやって落としたんだ？って
不思議に思うこともあったけど、本人に聞くほど興味もなかったから、特段会話が始まるようなことはなかった。

そして大学卒業後、

新卒で入社した会社で見覚えのある後ろ姿だなと思った人物が辰哉だった。