【ツイステ】捻れた世界で恋に微睡む【短編集】 (ページ6)

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シリウスは見ている＿2 ページ6

ぱちりと目を丸くして、反射的にこぼれたのはAさんの声。僕は無意識に、凍えてしまった小さな手を掴んでいた。

｢……｣
　
　静かな静寂が2人を包む。Aさんも僕も、瞳に互いの顔が映るのが分かった。
　この行為に今更後戻りなどできないというのに、何も言葉が出てこない。努力によって蓄えてきた語彙が、今では泡のように消えた気がした。
｢……あの、｣
｢……はい｣
　ぴぃんと張った冬の空気を切ったのは、彼女だった。
｢もうすぐそこですけど、このまま歩いてもいいですか？｣
　目を細め笑ったその顔は、無理に演じたものではないとすぐに分かった。
｢……明日もシフト入れますからね｣
｢う、やっぱりタダじゃないんですね｣
　当然でしょう、と表情を変えず淡々言うと、また嬉しそうに三日月を浮かべた。ぎこちなく繋がれた手を、なぜか離そうとは思えなかった。
　ふと視線を上げれば、シリウスがちかちかと強く煌めいていた。
　あの恒星はきっと、知っている。何せ地球から見える星の中で最も明るい恒星なのだから。自らが放つその輝きが、僕達をよく見下ろせるだろう。
　僕がいるのだから、ホームシックにならなくてもいいのに。
　そう、愚かにも願ってしまったことを。
　瞳の中のシリウスは知っている。

イメージソング・瞳の中のシリウス