【ツイステ】捻れた世界で恋に微睡む【短編集】 (ページ36)

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彼女はひだまり＿3 ページ36

Aと親しくなって大分経った頃。肝を冷やしたことがあった。
　飛行術が1年生2年生合同で行われた時。その日、カリムはグリムと。シルバーはAとペアを組んでいた。
　魔力のないAは、グリムの魔力で箒に跨り空を飛んでいた。グリムとAは2人で1人だから、ペアのカリムとシルバーは地上から2人を見守っていた。晴れ渡る青空に、小さな人影がぽつぽつと浮かぶ。いつもは目線を下げて見つめるAが
今や頭のずっと上にいる。楽しそうな声がして、固く真一文字に引き結んでいたシルバーの唇から力が抜けた。
｢そろそろオレ達も行こうぜ！｣
｢あぁ、行こう｣
　シルバー達も箒に跨って体を浮かせる。目線を下げて地面から遠く離れて行く様子を見ると、人から鳥になった感覚が体に伝わってきた。2人はぐんぐん高度を上げる。
｢2人とも追いついたぜ！｣
｢もう追いつかれちまったのか……よし、オレ様もっと高いところまで登るんだゾ～！｣
｢えっ、ちょっとグリム！｣
｢お！オレも追いつくぞ！｣
　Aの悲鳴と楽しそうなカリムとグリムの声が徐々に離れていく。追いかけるべきかと一瞬迷うが、ペアのAがいるためシルバーも高度を上げていった。
　すると突然、強い風が空に浮かぶ生徒を押し出すように吹いてきた。あまりに唐突だったため、シルバーも強く押されたが、何とか持ちこたえた。
｢！ A！｣
　シルバーが気づいた時には既に遅かった。Aの体は箒から離れ、地面に向かって落ちていく。ひゅ、と血液が逆流するのを感じた。
｢A！！｣
　カリムも、Aの方へと急ぎ下降した。
　呼吸を忘れ、風を引き裂きながらAの元へ向かった。名前を呼びながら、そして腕の届く範囲まで来た時に、Aを力強く受け止めた。反動で箒が1度ガクンと上下に揺れる。バクン、バクン、と胸の真ん中が大きく跳ねる。Aに聞こえているだろうが、それは今気にすることではない。荒くなった呼吸に頭がくらくらする。Aがまた落ちてしまわないように、と強く強く抱きしめる。
｢……怪我はないか……｣
｢は、はい……その、シルバー先輩が受け止めてくださったおかげで、何とか｣
｢そうか……Aが無事で、何よりだ……｣
　後から聞いたが、高度を上げた瞬間強風が吹き、Aがバランスをとれなくなり手を滑らせてしまったことが原因だと。
｢すみません、ご迷惑を……｣
｢気にするな｣
　シルバーはまた少しだけ、腕の力を強めた。