あなたの隣は落ち着かない＿2 ページ24
｢監督生さんも、眠れないのですか？｣
月の光を受けているせいか、先輩の顔がとても神秘的な雰囲気を纏っている。そこから発せられる優しい声がとてもくすぐったい。
｢……少し｣
先輩が隣にいるから。だなんて、恥ずかしくて言えないや。唇をぎゅっと閉じて、口角をあげた。｢僕もです。あなたが隣にいるから、落ち着かない｣
学園で見かけることのない柔らかい笑顔が、私に向けられる。今が、夜だから？ いつもよりストレートに飛んでくる言葉に一々ときめく。私ばかり落ち着かない気がする。すると、先輩が私に背を向けて歩み出し、窓をあっさり閉めた。冷たい風はもう流れてこない。あの窓、なかなか動かないのに。そしてまた、私の隣に戻ってきた。
｢……先輩って、緊張と無縁そうですけど｣
｢おや、そうですか？ これでも緊張していますよ｣
｢えー、全然見えないです｣
｢信じてもらえないだなんて悲しいです……。ですが、愛しい恋人の隣なんですから。当然でしょう？｣
本当？ と少し疑いながら先輩に笑った。だけど、私と同じ気持ちだったのが嬉しくて。余計に胸が鳴って仕方ない。
｢……私も、先輩の隣……だから。ドキドキして眠れなかったんです｣
そう、こんなにも。早まる鼓動を聞かせるように、私はぎゅう抱きついた。
｢……ふふ。こんなに早いと、眠れないのも仕方ありませんね｣
大きな腕が私を包み返す。とく、とく、とんとん。先輩の心臓の音が、耳に直接届いた。一定のリズムが乱れて、どんどん速くなっていくのが聞こえる。
｢監督生さん、僕が子守唄を歌いましょうか｣
｢子守唄？｣
見上げると、にこにこ。ジェイド先輩は嬉しそうに笑っている。
｢でも、それって。ジェイド先輩が寝られないんじゃ｣
｢そんなことありませんよ。子守唄は歌う方の心も安らぎ落ち着かせてくれるものですから。僕もいつの間にか眠っているとおもいます｣
｢へぇ……先輩の子守唄、聞いてみたいです｣
｢お任せ下さい。それに｣
ちゅ。額に落ちてきた、優しいキス。幼い子どもにするように。
｢あなたの寝顔を見るのは、恋人である僕の特権でしょう？｣
あなたの隣は落ち着かない＿3→←あなたの隣は落ち着かない＿1【ジェイド】
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作者名：ぱるこ | 作成日時：2020年9月21日 23時
