少年と虎と矢張り太宰 5 ページ12
国「確かに虎の被害は二週間前からこっちに集中している。それに四日前に鶴見川で虎の目撃証言もある。」
「それなら敦君の見た虎は恐らく本物ね。」
彼は嘘を言っているようにはやはり見えない。嘘であるならもっと挙動不審になってもいいし、たとえ嘘を付いていたとしても彼に全くメリットがない。
太「敦君。これから暇?」
唐突に太宰さんがにっこりとこういった。
中「……猛烈に嫌な予感がするのですが。」
ああ、その予感はきっと大当たりだろうと思う。だってあの太宰さんがかなりいい笑顔なのだ。もう嫌な予感しかしない。
太「君が『人食い虎』に狙われているなら好都合だよね。虎探しを手伝ってくれないかな。」
もう、疑問符すらつけていないぞこの男。何?確定事項なの?そうか、そうだよね。知っってたよ。うん。もう遠い目しかできない。案の定敦君は拒否するが、報酬が出るよと太宰がいった瞬間に目の色を変える。敦君無一文だもんね。お金、欲しいよね。断るという選択肢をしっかりなくしていく。勿論国木田さんが反論しようとしたが何か紙を渡していいからと納得させた。何渡したのねぇ?
「じゃあ、私はここで失礼しますね。」
太「何言ってるの?Aも一緒に行くんだよ。」
面倒になる前に逃げたかったのに!当たり前のように言われてしまった。
拒否権は?と聞くも勿論ないよと返される。太宰さんを前にして拒否権という言葉はあまりにも無力過ぎた。一応私、休暇なんだけどな。という言葉は意味がなさすぎるので飲み込んだ。
所変わって海沿いにある並んだ倉庫のうちの一つに今いる。
乱雑に置かれた荷物に腰を掛けすることもなくただぼーっとしている。私が来る意味あったのか正直謎すぎる。
隣にいる太宰さんは相変わらず『完全自 殺』とでかでかと書かれた本を読んでいる。こんな暗い中よく読めるなと思ったが、きっとすべて頭に入っているのだろうと思いなおす。だって太宰さんだ。そんなこと朝飯前にできるはず。大体この本出版元はどこなのだろう。表現の自由が許されているこの日本とて流石にアウトな書物ではないのだろうか。何故出版できているのかとても不思議だ。
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名無し60018号(プロフ) - とても面白かったです!自分すごく続き気になります!これからも応援してます!頑張ってください! (2020年9月22日 8時) (レス) id: 944439b224 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白翼 桜 | 作成日時:2018年5月31日 15時