距離【２】

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日本に着いて、電車やバスに揺られ着いた自宅は、たった一ヶ月居なかっただけなのに、もう既に懐かしく感じていた。


荷物を片付けるのが面倒臭くて、リビングに放置して直ぐに近くのソファに倒れ込む。

ふう、と溜息をつき、ポケットからスマホを取り出すと同時に落ちたのは、行き場を失った煙草。




『あぁ、そっか、』




最悪。

小さく呟き、それを拾い上げてゴミ箱に向かって投げたが、ノーコンの私は見事にそれを外して、ゴミ箱手前で落ちる。

身体を起こし、それを拾うと考えないようにしてた彼の事を、どうしても思い出してしまう。



どうして約束してたのに来てくれなかったの、もしかして何かあったのかな、今まで約束を破られたりしなかったのに、


結局連絡先の交換なんてしていなくて、分かっているのは彼の家だけ。

でも、日本に帰ってきた今、簡単に会いになんて行けなくて、

ほら、やっぱり距離って大きな壁じゃん。




数本残っている煙草を一本取り出し、自宅にあったライターで火をつけると、先端はオレンジ色に光を放ち煙草独特の匂いを放つ。

やっぱり苦手だ、
その匂いにそう感じて、彼が吸っていたように煙草を口に当て一口吸うと、当たり前だが噎せてしまう。


高校生の時に聞いた曲で、彼が置いていった煙草を吸う、というシーンがあったけど、同じ事をしてもやっぱり噎せてしまうよね。

そう自虐的に笑いを浮かべ、煙草の火を消す。




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