距離【２】

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直ぐに離れたそれは、本当に一瞬の出来事。

もう既にマスクをし直した彼は、帰ろ、といつも通りの様子で、放心状態の私を他所に、帰路に着いている。




『ちょ、ちょ…っと待ってください、待っ、待って、mondoさん』


「何喋ってる。置いてくよ」




慌てて彼に駆け寄り、握り締めた拳を軽く彼の肩に当てると、イテッと小さく彼がつぶやく。




『信じらんない！』


「Aさんが良い言ったじゃん」


『いっ、言ったけど！韓国語分からないってば！最低！』


「俺日本語わかんないよ〜」


『じゃあ今喋ってるの何語だ！』




ケラケラ楽しそうに笑う彼は、一ミリも反省をしていない様子で、一人で慌てる私がどうやら可笑しいらしい。

そもそも、当初の目的は"彼が何を言ったのか"だ。

それなのに、また違う韓国語を出され、しまいには、キスしやがった。




『ああいう事は、彼女とか、そういう恋人にしかしないもんですよ！』


「別にAさん、マスクしてたじゃん」


『マスクの上からだから良い、とかならないですから！そしたら、mondoさんは付き合ってない女性に、マスク越しだからって、キスするんですか？！』


「いや、しないよ」




じゃあ何故した！

即答で帰ってきた返事に、思わずノリツッコミを入れそうになる。


マスク越しとはいえ 、彼はマスクを外していて、その感触はマスク越しに伝わってきていたわけで…

なんて、まるで自分が変態になったような思い出し方に、身体が段々熱くなる。




「まあ、はい、空港行った時になんて言ってたか教えてあげるよ」


『…同じ事しないで下さいね』


「しないって〜笑」




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