大好きな僕、大嫌いな君【歌い手】 (ページ6)

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同窓会のお誘いをゴミ箱に放り込み、私はぼすん、とベッドに背中から倒れ込んだ。

視界が上下に揺れている。

｢同窓会……ねぇ…｣

将来有望なギタリスト、と呼ばれていた私。

動かなくなってしまった右手。

弾けなくなった、ギター。

合わせる顔のない惨めな私と過去の部員とクラスメート。

動かない右手を気遣ってか、親はあの事故のあとすぐに私に退部を促した。

｢嫌だよ、辞めたくない｣

なんて抗っても、

｢もう弾けないんだから居る意味が無いじゃない！｣

と涙ながらに退部を強制させられるばかりだった。

せめてボーカルとしてでも軽音部に居たかったと今でも思う。

そんな私を見かねた先輩は私に優しく声をかけた。

『Aちゃんは退部したくない？ボーカルとしてでもここに居たかった？』

『はい』

『じゃあ、あたしが代わりに歌うよ』

『え……？』

初め、先輩が何を言っているのか理解出来なかった。

当時の先輩は機材担当。表立ってステージに上がる事は無かったし、ステージに立つほどの知識なんてきっと足りなかったのに。

『音楽知識はあるよ、少しだけど。だから、退部した後もAちゃんの分まで代わりに歌うし、ギターも練習し始めるよ。だからさ』

この言葉にどれだけ救われたか計り知れない。

『Aちゃんは振り向かないで前を向いて、新しい目標を見つけて。此処には代わりのあたしがいる』